マクセルがAppleを訴えた特許を読んでみる (Apple Watchのロック解除方法)
マクセル、Appleを12件の特許侵害でさらに訴える〜訴訟対象は合計27件にという記事がありました。
今回は、Apple Watchのロック解除方法に関係する「モバイルターミナル及びその制御方法(特許番号10264456)」を読んでみました。
特許の内容
Apple Watch が、iPhoneのBluetooth 通信圏内にあるとき、
iPhoneのロック解除で、Apple Watchのロック解除もできるという内容です。
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例えば、クレーム16の内容は以下の通りです。
ロック状態解除システムには、
第1のモバイル端末(iPhone)と第2のモバイル端末(Apple Watch)があり、
それぞれ、不正アクセスを防ぐためにロック状態とロック解除状態に切り替わるようになっています。
そして、第1のモバイル端末は、以下の要素を備えています。
・短距離無線通信(Bluetooth通信)を行うトランシーバー。
・第2のモバイル端末の情報を記憶するメモリ。ここで、第1のモバイル端末と第2のモバイル端末は、同じユーザに関連付けられるように相互に登録されています。
・ユーザから第1のモバイル端末(iPhone)への認証入力で、第1のモバイル端末をロック状態からロック解除状態に切り替えるプロセッサ。
ここで、ある条件が満たされると、プロセッサは、第2のモバイル端末(Apple Watch)のロックを解除するため、第2のモバイル端末に情報を送信します。
ここで、ある条件は以下の条件です。
まず、
第1の移動端末(iPhone)と第2の移動端末(Apple Watch)がロック状態で、
第2の移動端末は、トランシーバーの短距離無線通信(Bluetooth)の通信範囲内にある。
次に、
第1の移動端末を介して第2のモバイル端末との短距離無線通信をする。
最後に、
第1の移動端末を介して、第1の移動端末(iPhone)の状態をロック解除状態に切り替える認証入力を受信します。
マクセルが侵害を主張するApple製品
Apple Watch のロック解除方法が、この特許のクレーム16-20を侵害していると主張しています。
Apple Watchをロックする/ロック解除する - Apple サポート
マクセルは、バイオメトリクス認証に基づいて、第1の移動端末(iPhone)をロック解除する(クレーム17)も侵害していると主張しています。
しかし、取扱説明を読むと、手首の非検出で自動ロックなので逆じゃない?と思ってしまいました。ロックするのは、iPhoneじゃなくてApple Watchのほうですし…。
書誌事項
出願日:2018-10-25 (優先権主張日 2012-05-23)
登録日:2019-04-16
権利満了日:2033-05-01 … まだまだ長生きします
発明者:平林 正幸、西島 英男
日本の出願
元の出願の公開公報 特開2013-242820 を見ると、ほぼApple Watchのロック解除です。
【課題】 専用のキー側装置を用いることなく第三者による不正使用を防止し得る携帯端末を提供する。
【解決手段】 複数の携帯端末を互いに予め登録しておき、この内の1つの携帯端末のロック状態が解除されたら、近距離無線通信の通信圏内にある他の携帯端末と通信を行い、当該他の携帯端末のロック状態を解除し、通信圏外になったら再びロック状態にする。
Apple watchの発売が2015年、SamsungやSonyのスマートウォッチも2013年の発売ですから、時代を先読みした発明です。
ただし、特許公報 特許5856012 では、かなり限定した内容になっています。
権利範囲に、基地局との通信やGPS、Bluetooth通信範囲外になったときの制御方法がが追加されてしまっています。