マクセルがAppleを訴えた特許を読んでみる (US7199821 写真のホワイトバランス調整)
マクセルがAppleを訴えた特許15件のうち、写真撮影時のホワイトバランス調整技術(特許番号7,199,821)を読んでみました。
特許の内容
被写体までの距離、被写体の明るさ、ズーム値に応じて、ホワイトバランスの調整を変える発明です。
部屋全体を撮影したときは、ホワイトバランスの調整を行います。
様々な被写体を含み、色情報の信頼性が比較的高いためです。
一方、顔のズームを撮影したときは、ホワイトバランスの調整を行いません。
画面全体が同じ色で占められており、色情報の信頼性が比較的高い低いためです。無理にホワイトバランス調整を行うと顔が青っぽくなってしまう場合があります。
ただし、ズーム撮影でも、白い犬など画面全体がほとんど白色のときは、ホワイトバランス調整を行います。
この被写体の画面上で占める割合が大きいので、わずかなホワイトバラスずれでも、が目立ってしまうためです。
どうやってホワイトバランス調整の有効/無効を判定するかというと、被写体までの距離が閾値Gを上回るか否かで判定します。
その閾値Gは、被写体輝度とズーム値で決めます。
下図のように、被写体距離閾値Gを、ズーム倍率Eが大きいほど大きく、被写体照度Fが明るいほど小さくします。
例えば、部屋全体を撮影しているときは、ズーム倍率が低いので、閾値Gが小さくなります。つまり、被写体までの距離が非常に小さいとき(接写撮影)以外は、被写体の照度によらずホワイトバランス調整が有効になります。
顔のズーム撮影のときは、ズーム倍率が高いので閾値Gは大きくなります。さらに被写体照度が暗めなので、さらに閾値Gは高くなりあす。つまり、よっぽど被写体が遠くでなければ、ホワイトバランスの調整機能は無効になります。
そして、犬のズーム撮影のときは、ズーム倍率が高いので閾値Gは大きくなります。ただし、被写体照度が明るめなので、被写体が比較的近くてもホワイトバランス調整は有効になります。
マクセルが侵害を主張するApple製品
マクセルは、Apple製品の画像処理が本特許を侵害していると主張しています。
Macの「写真」で写真の明るさや露出などを調整する - Apple サポート
「写真」の調整ツールを使うと、写真の明るさや色味を簡単に変更して最適な結果を得ることができます。高度なアルゴリズムを使用してイメージが分析され、写真の見た目が最適になるように正しい調整の組み合わせが適用されます。詳細なコントロールを展開して、露出、ハイライト、シャドウ、明度、コントラストを含む各調整を微調整することもできます。
この記載だけだと、特許の技術を使っているのかわからないですね。
マクセルで、被写体までの距離、被写体の明るさ、ズーム値の条件を振りながら、ホワイトバランス調整が有効になるか実験したんでしょう。
詳しくは別紙8に書いてあるようなのですが、別紙8を閲覧できません…。
元々はどんな出願だった?
元から距離、明るさ、ズーム値に応じて、ホワイトバランス調整を行う出願です。
脱線しますが、明細書に「人物21の顔(薄い肌色の被写体)」という記載がでてきます。
今となっては「肌色」は避けられていますね。 三菱鉛筆は、2000年9月の生産から「はだいろ(肌色)」の呼称を「うすだいだい」に変更したそうです。
米国出願の明細書を見ると、そのまま "skin color" と翻訳されています。
2002年の出願なので仕方がないかな。
書誌事項/特許公報
出願日:2002-12-18 (優先権主張日:2002-02-27)
登録日:2007-04-03
権利満了日:2024-12-23
発明者:宮尾晴彦、中野孝洋
特許公報
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